結火・むすび / Vol.06

100万人のキャンドルナイトが行われる夏至の日は、北緯66.6度以北の北極圏全域が白夜となる日です。白夜は、真夜中になっても太陽が地平線上から消えず、1日中空気が薄明るい現象のことをいいます。白夜が美しいことで有名な国は、フィンランド。

そのフィンランドとロシアの中間辺りに”COLKINIKHA(コルキニカ)”という国を創造し、洋服にイラストに音楽にと、その独自のファンタジックな世界を表現している、酒井景都(さかいけいと)さんという方がいます。

彼女は100万人のキャンドルナイト2007のイメージモデルでもあります。

今夜は、「思いつくよりは、思い出しながら」紡ぎだしているという、景都さんオリジナルの世界観をお伝えします。



酒井景都 さかいけいと
Made in COLKINIKHAデザイナー/モデル

1982年生まれ。96年雑誌「オリーブ」(マガジンハウス)でモデルデビュー以来、ファッション誌カルチャー誌のモデルとして活躍中。慶応大学在学中の02年、ブランドCOLKINIKHA (コルキニカ)を新宿伊勢丹解放区でスタート。毎期物語性のあるコレクションを展開。ファッションシーンに留まらず、コルキニカの世界をアート、音楽、広告と様々な媒体で表現している。YAHAMA/contemodeから中田ヤスタカ氏とのコラボレーションでCOLTEMONIKHAとしてCDリリース、京セラ(au)のタイアップソングとしてOA。マーブルトロン(中央公論新社)から初の本「europikha」を出版。現在絵本執筆中。また、ウェブマガジン「あしたのハーモニー」にも登場。

「コルキニカ」は、酒井景都さんが立ち上げたファッションブランドの名前であると同時に、景都さんの中に小さな頃からずっとあった、ある架空の国の名前でもあります。

国の具体的な設定も決まっています。場所はロシアの近くで、国土の大きさはだいたい北海道くらい。14歳で成人を迎え、平均寿命は69歳。気温は平均14度くらいの島国。1つ1つ手作りしたものを物々交換しながら、子供もお年寄りもみんな心暖かく暮らしているんだそうです。雑誌「オリーブ」の専属モデルもしていた景都さんは、まさにご自身がこの国の住民という感じで、大きな瞳をくるくるさせながら、絵本を読み聞かせるようにお話ししてくれました。

アンティークの買付けをしていたご両親と共に、幼少時代をイギリスで過ごしたことのある景都さんが手がけるコルキニカの洋服には、アンティークのレースや布がたくさん使われています。


イギリスやフランスなどから取り寄せたり、自身で買付けに行かれたりする中で、出逢った素材を中心につくられているので、一点モノが多いのです。

「焼け跡やしみのついた素材を手に取ると、自然と頭の中に広がって行くストーリーを想いながら、デザインをしています」

という言葉どおり、2003年春夏のコレクションをスタートして以来、コレクションにはそれぞれ、物語のタイトルがついています。
COLKINIKHA「コルキニカ」
フィンランドとロシアのあいだにある架空の国。国土は小さく、気温は平均14℃という寒さ。この小さな国の中には幾つもの村があり、空の色がグレイの日も、雪の日も、心暖かく暮らしています。酒井景都さんがデザインするファッションブランドの名前でもあります。コルキニカの洋服を身にまとえば、たちまちあなたもコルキニカ国民。
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2007年の秋冬コレクションは、「Doll House」。可愛いものがたくさんちりばめられた人形の部屋のようなイメージです。人形たちは今にも踊りだしそうな「生きた世界」。ここまでくっきりとした世界観には、やはり100年以上も昔からあるアンティーク家具に常に囲まれて育った、ご家族との暮らしが大きく影響しているんでしょうか。

「母がこだわって使っていた食器のくすんだブルーや、使い込まれた椅子の色調なんかは、今でも好きな色と同じです。中学生の時、クラスの男の子に、わたしの家の家具は全部壊れてるなんて言われましたけど、言われるまで壊れてるなんて考えたことはなかったし、使い古されたものも丁寧に使うのが当たり前の暮らしだと思っていました」

と話す景都さんの代官山のオフィスの部屋では、高島屋の紙袋のバラの部分をまあるくドーナツ型に切り抜いたものが、フランスで8ユーロで買った、無名の画家が描いたバラの絵と一緒になって、さりげなく貼られたりしていました。


机には、真っ白なキャンドルが数本並んでいます。ヨーロッパは教会でのお祈りのときに使うキャンドルなど、生活の中にごく自然とキャンドルがあるそうですが、景都さんの暮らしの中にもあったものなんでしょうか。
「わたしの家では、電気を消すのがわりと当たり前です。お母さんもわたしも、お風呂に入るときは、キャンドルだけで入ってます。お父さんはもしかしたら電気をつけてるかもしれないけど、、、。この部屋(コルキニカのオフィス)でも、日が落ちるまで電気はつけないし、暗くなったら電気よりキャンドルに火をつけて過ごすことが多いです。人がやってきて電気にしようよって言われない限り、暗い中で過ごしてますね。」


まさに、キャンドルナイトのイメージモデルになるべくしてなったような景都さん。コルキニカでのキャンドルナイトの夜には、みんなが円になってコサックダンスを踊って過ごすんだそうです。

「キャンドルナイトというと、わたしは小学校のときのキャンプファイヤーを思い出します。森の中でみんなで円になって火を囲んで、歌を歌ったり、踊りを踊ったり。あたたかい火のようにいつまでも心に残る優しい夜がコルキニカのキャンドルナイトです。」

景都さんがキャンドルをデザインしたら、どんなものができるんでしょうか。

「やっぱり、花びらをちりばめた可愛らしい感じがいいですね。バラの花びらが浮かんでて、やわらかい色合いがいいかな。」

とのこと。

今後は雑貨のデザインも手がけていきたいとのことで、ご自身が住みたい部屋を想像しながら、構想を練っているところだそうです。実は、今回のキャンドルナイトのビジュアルで景都さんが横たわっている部屋は、まさにこの「自分が住みたい部屋」そのもの。

たくさん好きなものが散らばっていて、一見ごちゃごちゃしているけれど、居心地の良さそうなこのお部屋。カメラマンさんと一緒に作りながら撮影したそうですが、作ってみたらたまたま薄明かりの部屋ができあがっていたそう。他の北欧諸国同様、夏至の日には白夜を迎えるコルキニカならではですね。
「キャンドルナイトはわたしにとって、灯りをともして、ファンタジーを想う夜です。忙しいとついつい忘れちゃういろいろを、自然と取り戻せる大切な時間なんです。」
幅広く活躍され、忙しい毎日の中、ゆったりとした優しい世界観を失わずにいられるのは、キャンドルの灯りと共に暮らしているのが秘訣なのでしょう。 本当に、絵本から飛び出してきた少女のようで、白夜に見られる幻想的な空気を身体中に秘めた景都さん。今年の夏至の日には、コルキニカの国にも、キャンドルのあたたかい灯りがともることでしょう。

むすび書き:香音(かのん)



暦の待ち受け画面ダウンロード
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今回の暦の待ち受け画面
いままでは日本の暦をお届けしてきましたが、地球の北側はどうなっているでしょうか。北緯66.6度以北の北極圏では、日に日に白夜の時間が長くなり、夏至の日に白夜の時間が最も長くなります。今回はフィンランドの白夜の景色をお送りします。

「結火」では毎回、メールマガジンの配信と連動して配信された日の暦のケータイ用待ち受け画面をお送りします。その季節を代表する写真の上に、その日の旧暦での日付(2007年6月8日は、旧暦では4月23日になります)

そして、その日の月齢(2007年6月8日は、月齢22.6、つまり下弦の月ですね)が表されています。

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