結火・むすび / Vol.08

結火、第八通目をお送りする今晩は、新月です。地球からは金色に光る部分が見えなくなり、いわば「ゼロ」の状態の新月の日は、新しいことを始めたり、願いごとをするのに最適な時期だといわれています。新しいことを始めるときには、新しい出逢いや気づきが待っているもの。

キャンドルナイトは日本中のあちこちで行われていて、その灯りのスケープは年々大きくなっています。

「気づき」に繋がる「火」を灯す「日」のイベントとして、大阪では2005年の冬至より、100万人のキャンドルナイト@オオサカシティが開催されています。このイベントは、大阪で新しい街づくりに取り組む地元の企業や人々の手でつくられ、支えられています。年々、都市開発がすすむ大阪のビル街で大規模なキャンドルナイトイベントを行い、「気づき」の灯りを広げる仕掛け人、水口学さんのお話をお届けします。



水口 学  みずぐちまなぶ
(株)バウコミュニケーションズ 営業企画/100万人のキャンドルナイト@オオサカシティ総合プロデューサー

1969年生まれ。関西を中心に、独自のプランニング&プロデューススタイルを駆使してAD&PROMOTIONの現場で爆走を続ける。爆走、と言えば、一見さわやかな印象とはうらはらに、若き頃はかなりの「ごんたくれ」として、爆走、いや暴走していたらしい。良く言えばその経験を活かして(笑)、近年はCSR・環境ムーブメントなどにも興味を傾け、精力的に活動中。「キャンドルナイトを大阪で!」の強い思いから、2005年冬、"1000000人のキャンドルナイト@OSAKACITY"をライフワークとして立ち上げる。その素顔は、阪神タイガースとROCKをこよなく愛するアツき関西人。
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西梅田の街は大阪でも新しい街。文化的なイベントを通して街のイメージを上げ、活性化していこうとする取り組みを、地元大阪の企業が中心となって進めていました。ある時、文化イベントで何かいい企画はないかと水口さんのもとへ話がきました。ウェブサイトや雑誌を通じて、キャンドルナイトのムーブメントを知っていた水口さんは「ぜひ大阪でもやってみたい」と思い、キャンドルナイトを提案しました。

「街の開発がどんどん進んでいく中、その中でひとつの象徴となるような文化がありませんでした。文化をつくりあげていくのは、地に足をおろして地元で活動されている企業が中心となってやるべきじゃないかなと思っています。大阪の街は、人情もありますし、もう37年も暮らしているので、愛着があります。この街なら、みんなの手でキャンドルナイトをつくることができるのではと思いました。」


水口さんの熱心な想いに地元の人々も賛同し、開催が決定したものの、どのようにイベントを開催すればいいのか、最初は手探りの状態でした。そこで、水口さんは、100万人のキャンドルナイト呼びかけ人代表の竹村真一先生に、アドバイスを仰ぐことにしました。

「企業や店舗へのメリットは、当然考えました。でも、僕はできるだけ企業色をなくしたかった。キャンドルナイト自体が客寄せの一つの道具にはなってほしくはなかったんです。できるだけフラットに、街のお祭りとして、一般の方も含めてこのキャンドルナイトの時間を共有してもらえるようなイベントにしようと思ったんです。これは始まりから今までずっとぼくが大切にしている理想です。」

しかし、準備を進めていくうちに数々の壁にあたり、当初の2005年夏至に実施する計画は見送り、結局、2005年冬至に開催することとなりました。

「第1回目は、電気をいっせいに消すことが最初の壁でした。普段、イルミネーションはタイマー設定など機械で制御されているので、故意に消すことがないんです。それで、イベント1週間前に消灯の予行演習を実施したんですが、これが大変でした。1つ1つの電気を消すスイッチの位置やいっせいに消すタイミングなど、設備の人も初めての試みだったので、夜9時から夜中までかかってやっていました。この時、改めてこんなに電気を使ってるんだな、という深い気づきと実感がありました。」

消灯や、キャンドルの火の消防対策など、丹念な準備を重ねた後は、中身づくり。キャンドルアートに参加する学生を集い、夜遅くまでミーティングを行いました。学生は使いたい素材やラフスケッチを持参。運営側は、それを元に確認とアドバイスを繰り返し行い、当日の運営について説明します。学生の自由な発想を大事にしながら、アイディアを実現できるように皆で話し合い、大阪キャンドルナイトの灯だねを作っていきました。


こうして、ようやく開催となった2005年冬至。天気は、早朝から15年ぶりの積雪をともなう大雪。

「自分も、主催企業の方も、朝7時位に会議室の窓から空をみると、雪が横殴りでした。ぼくも含め、みんな、みるみるうちに、顔面蒼白になっていくのが分かりました。」

来場者や、昼前から準備をはじめる学生の安全を考え、その日は中止し、開催を翌日に順延。

「雪が降るなんて本当に予想していなかったのであわててしまいました。でも当日、昼過ぎには雪はやんで夜は晴れたので、間違ってイベントにきてしまった方もいて。お客さんには会場で、明日に順延です!と、ずっと説明していました。そんな状態で次の日を迎えたにもかかわらず、9万4千人もの方に来ていただいて、涙が出るくらいうれしかったですね。」


イベントが終わった後、「いいイベントだった」「ずっと続けてほしい」「ぜひ来年も」といううれしい反響がたくさん来ました。キャンドルアートに参加した学生の間でも、絆が深まり、地元企業の人たちとアーティストの間でも、対話が生まれるきっかけになりました。

何もかも、手探りで始めた2005年。当初は2回、3回と続いていくとは思わなかったそうです。今年の夏至で、開催はもう4回目。大阪でキャンドルナイトが続けて開催されている背景には、地元企業の人々や、参加するアーティストたちの、深い思い入れがあります。何よりも、みんなが作り手であり、参加者であることから生まれる、キャンドルナイトへの愛着が秘訣です。

「イベントを仕掛ける側も、見に来てくれる人も、肩の力を抜いて、自分たちの自由なスタンスで参加できるのが、なんか、「ゆる〜く」て、いいと思いませんか。あとは、やはり理解のある主催の企業が、毎年賛同金を出してくださっているところが一番大きなところだと思います。

限られた資金の中、継続して年2回開催できるように作りあげていくのが、僕たちの使命です。お金をかければ、かけただけいいということではなく、イベントに関わる人たちが、同じコンセプト、同じ気持ちを共有してやっていければ、いいものが出来るのではと思っています。」

毎回、東京から参加しているCandle JUNEさんは、大阪の印象についてこう語ります。

「大阪のキャンドルナイトは、街のど真ん中で開催されているのに、イベントイベントしていない。大阪という土地柄を考えるともっと見返りを求めてもよさそうなのに、それがまったくない。誰がなんのために見に来てるかもわからないのに、毎回、本当にたくさんの人が集まっている。」

 

学生による作品作りのサポートをはじめ、イベントを実施する上では、キャンドルナイトの根底にある「自主性」と「多様性」が大きなポイントだと水口さんは考えています。

ミュージシャン、アーティスト、学生は趣旨に賛同し「参加したい」という自発的な思いでイベントに参加しています。そして、自由な発想で生まれた個々の色を、そのまま大阪キャンドルナイトで表現しているのです。「将来的には、さらに多くの企業を巻き込み、もっとたくさんの方が参加できるようにしたい」と水口さん。今年からは、企業だけでなく、大阪府や大阪市もキャンドルナイトを後援。今後は、行政も一緒にキャンドルナイトを広げて行くことになりそうです。

水口さんにとって、キャンドルナイトは『年に2回、いろんなことを確かめる時間』。

「イベントを街中でやることで、毎回本当にたくさんの人たちに来ていただいています。僕にとっては、来ていただいたことそのことが、人間のポテンシャルというか、人が本来もっている優しさみたいなものを感じ取れる瞬間なんです。人間ていいなぁ、捨てたものじゃないなぁ。そんなことを、毎年キャンドルナイトの夜に思います。この小さな気づきの積み重ねは、僕にとって、すごく大事なことです。」
 
アーティスト同士が繋がったり、友人同士の絆が深まったり、自分の街をもっと好きになったり。キャンドルナイトで灯る心の灯りは、地域や人々の心を繋ぎ、新しい「気づき」を与えてくれる「結び目」となります。皆さんも、心にキャンドルを灯して、それぞれの「結び目」をみつけてください。

むすび書き:kinyuka




暦の待ち受け画面ダウンロード
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今回の暦の待ち受け画面
大阪芸術大学付属大阪美術学校で彫金の講師をしているアーティストの桜井さんと学生による合作のキャンドルアート「メビウスの灯」は地球を表し、輪の中には24個のオブジェがあります。毎回、次の人、次の世代に受け継いでいく、というコンセプトで制作され、昨年の冬至から大阪のキャンドルナイトに登場しています。今日は100万人のキャンドルナイト@オオサカシティより、キャンドルアートをお送りします。

「結火」では毎回、メールマガジンの配信と連動して配信された日の暦のケータイ用待ち受け画面をお送りします。その季節を代表する写真の上に、その日の旧暦での日付(2007年6月15日は、旧暦ではx月xx日になります)

そして、その日の月齢(2007年6月15日は、月齢xx.x。つまり新月ですね)が表されています。

ひじりのこよみ:
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