結火・むすび / Vol.03

最初は産直で生協に入れるところからスタートした「大地を守る会」は今や、生産者会員数約2500人、消費者会員約7万7000人を抱えた大きな組織です。わたしたちの手元に届くのは野菜だけでなく、魚、牛乳、パンにお肉と種類も豊富。「大地を守る会」は身体にいいもの、丁寧に作られたものだけを生活者に届ける生協の役割を果たしています。

「自然に身を任せて、そのとき出来た良いものを届けるようにしたい」

そう藤田さんが考えているとおり、注文するときには、届く野菜の数にあわせて値段別のコースがつくられていて、何の野菜かは手元に届くまで分かりません。
7種類コースなら7個分、その時期できた野菜が届きます。お値段も、1000円台、2000円台と、とてもお手頃。有機野菜と聞くとちょっとハードルが高いもののように感じられることがあって、生活に余裕のある人が買う物だと思っていましたが、1000円ちょっと払って7個の野菜なら、普段の出費と大して変わらないうえに、身体に良くて美味しい野菜が食べられるのです。

辻信一とカフェスローの話
100万人のキャンドルナイトの前身となるイベントがありました。
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ところで、「大地を守る会」の藤田さんは、「100万人のキャンドルナイト」を呼びかけ始めた5人のうちの1人でもあります。

「当時はブッシュ大統領が当選して、1ヶ月に1基ずつ原子力発電所を建設するというブッシュの政策に反対してカナダで「自主停電運動」が行われていました。それを見た辻信一さんが自分で運営しているカフェスローで暗闇カフェっていうのを始めてたんです。面白いなと思いました。ぼくも、提案型の運動がしたいなと思っていた時期でしたから、暗闇カフェを成功させた辻さんにお声がけされて、大地を守る会のメンバーを集めて、10月の反原子力の日に決め、「キャンドルプロジェクト」をやってみたんです。」

その年の企画で、キャンドルプロジェクトの参加者で作文コンクールを行い、こどもたちが綴る言葉に藤田さんは深く感動しました。それは学生運動のように勇敢なものではなかったけれど、本当に心をこめて綴られたあたたかい言葉でした。特別賞は「大地を守る会」から、みかん10箱にしたそうです。

盛り上がった藤田さんと辻さんはさらに大きな規模でやろうと声をあげて、そこに後の呼びかけ人となる竹村さん、マエキタさん、枝廣さんが集まり、「100万人のキャンドルナイト」と名前をつけ、スタートを切ったのでした。

藤田さんは、あったかい目をしていて、笑うと目尻が下がってすごく優しい笑顔をする方です。姿勢を伸ばして、丁寧に言葉を選んで、織物を紡ぐように人生のストーリーを伝えてくれます。聴き手のわたしの頭の中には、長く深いドキュメンタリー映画がずっと流れていました。その映像がなんとも心地良く魅力的なのは、藤田さんの人生がひとつに貫かれていて、その道を真っすぐ、真っすぐ走ってきたからではないでしょうか。すっかり感心してうなずくわたしに、そんなにいいもんじゃないんだよ、とでも言うかのように、藤田さんは一気に言葉を吐き出しました。

「今までを振り返って、最も大きな間違いは、自分が純粋になろうとしたことなんじゃないかと最近思うんです。自分は純粋で何も間違ってないと信じ込むことは、多様性を認めようとしないこと。グローバリズムと同じで、価値観を押しつけていることになると思うんです。その点で、キャンドルナイトも大地を守る会も、小さな自己決定をそれぞれの生活の中でやってもらえれば、それでいい。

自分だけが純粋と思わないでいられるし、一人一人がやっていることがゆるやかに繋がっているというスタイルが今に合っていると思います。」

小さな自己決定というのは、たとえば、お母さんが洗濯機の前で洗剤を入れるか石けんを入れるかと迷ったときに、石けんを使ってみること。おつかいを頼まれた子供が、スーパーでトマトが並んでいたとき、10円高くても美味しくて農薬を使っていないほうのトマトを手に取るようになるということ。生活のワンシーンで自分が決めてつくる「ほんものの暮らし」のことです。

「長い人生の中で汚れたもの。こだわりすぎたもの。そういうものの積み上げで、僕の心の中には檻があるんです。キャンドルナイトの夜には、その檻がだんだんと壊れていって、新しい世界が広がってゆく。ぼくにとって、キャンドルナイトとはそんな存在です。」

藤田さんがまだ10代のころ、この扉を開いたらその先にはきっと、未来が待っている。その頃から数十年の時を経て、今。本当は藤田さんの心の中にあった檻は、キャンドルナイトの灯りで自然と壊され、彼の目に望んでいる未来が少しずつ映り始めていることでしょう。

目に見える壁にこだわりすぎたり、大きな力を倒す方ばかり見ていると、結局何も変わりません。案外、足下に転がっている石ころを見て感じることのほうが大切だったりします。何より、日常の範囲内というのは、無理してない感じが長い間続けられそうで、気が楽です。本当に美味しい野菜を心をこめて丁寧に料理をし、大切な人と一緒に身体で味わいながら、ろうそくの灯りをともせば、誰の心にもある堅苦しい檻は降ろされ、そこで初めて望んでいる未来が自分の目に映るのかもしれません。

藤田さんはキャンドルナイトの夜、ご家族と過ごすことが多いそうです。

「ろうそくの灯りをともして、平和の話をするんですか。」と聞くと、笑いながら

「いえいえ。そんなの恥ずかしくてできません。このビールうまいなあ。とか、そんな話ばっかりです。ペコって猫がいるんだけど、ペコに向かって、次は誰がビール持ってきてくれるのかなあって話しかけてると、見かねて奥さんとかが持ってきてくれるんですよ。」

と答えてくれた藤田さんは、学生運動の話をしているときとは一変して、優しいお父さんの表情をしていました。

むすび書き:香音(かのん)


暦の待ち受け画面ダウンロード
http://www.hijiri.jp/m/0528.jpg(35KB)

今回の暦「小満・次候」について
前回のお話に登場した紅花。小満の次候(5/26〜5/30)は「紅花栄」(こうかさかう)です。紅花は平安時代初期から日本に入ってきて、高貴な色の一つとして珍重されてきました。紅花は実はエジプト原産のもので、シルクロードを逆にたどってきたものです。元々日本にはなかった色なのですね。

「結火」では毎回、メールマガジンの配信と連動して配信された日の暦のケータイ用待ち受け画面をお送りします。その季節を代表する写真の上に、その日の旧暦での日付(2007年5月28日は、旧暦では4月12日になります)

そして、その日の月齢(2007年5月28日は、月齢11.6、もうすぐ満月ですね)が表されています。

ひじりのこよみ:
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