結火・むすび / Vol.09

使っている言語は違えども、「100万人のキャンドルナイト」や「でんきを消して、スローな夜を」という言葉の中にこめられた深い想いは、地球に住んでいる人間ならきっと、共有できるあたたかいもののはずです。それぞれの国の言葉で、「100万人のキャンドルナイト」とみんなが口ずさむようになったら、それを通して小さな気づきが生まれたり、暮らしがひとまわり変わっていきそうですね。

「100万人のキャンドルナイトは戦後最も成功した国民運動なんだそうです。運動っていうのは、さざ波が起きて、それがどんどん広がっていくものだと思うんです。その原点は、1人1人がメディアだってこと。人間が知るとか、演じるとか、書くとか、話すとか。文化や芸術の中にその痕跡が残っていて、それが表現力というものだと思うから、その熱意に人が動かされる。火種が飛び火していくんです。それでね、1日に1人が2人に口コミで伝えると、28日で国民全体に伝わるの。メッセージはたった28日で伝わるんです。」

100万人のキャンドルナイトは、ゆるやかに、でもしっかりと束ねられた人々の想いにひそんだ、やわらかい火種が飛び火してきたから、とてもいい形で広まっている気がします。それにしても、28日とは、本当に驚きです。もっと、途方もない時間がかかるものかと思っていました。

「 28日ってのは、昔自分で計算してみて分かったことなんですが、あまりに短くてびっくりして、いろんな人に確かめてもらったけど、間違ってないみたい。みんなも驚いていて、10年くらいかかるかと思った、とか言うんです。運動というものの可能性が弱められているんです。そして、1人1人の力を信じる心も弱っている。わたしは普段、広告を生業にしていますが、こういう運動においては、広告費なんて本当はいらない。それくらい人間って、1人のもつメディア力は高いんです。」


闘争やデモのように激しく世論が動くことはあまりないですが、100万人のキャンドルナイトが5年間でこれだけ広まったのには、自分や隣の人が持つメディア力を、みんなが奥底では信じていたことを表してるんじゃないでしょうか。

「これだけ、経済的に豊かで、便利になると、心の余裕ができます。日本はようやくそういう段階まできて、異論や多様性を認めるようになってきたんじゃないかしら。今ここで、どれくらい個人のメディア力がものを言うか、確かめられる時が来ています。」

言葉を書き表現するプロであるマエキタさんが、信じているのは、人間は誰でも1人が1人が財産で、大きな力を持っているということ。

形を変えても共通の想いがこめられた言葉を、1日に1人が2人に伝えるだけで、たった28日で世界が変わります。

昼間は仕事をし、一方で二子の母でもあるマエキタさんの忙しい毎日の中でも、都心のビルの片隅でそっと咲く杜若に目を止め、細める、スローな時間が流れています。どんな日常を送っていても、身体の中の自「分」の時間を絶やさずにいられるのは、言葉や人間の力を深く信じ続ける心が大切なのでしょう。

むすび書き:香音(かのん)



暦の待ち受け画面ダウンロード
http://www.hijiri.jp/m/0619.jpg(27KB)

今回の暦の待ち受け画面
マエキタさんを取材していた浜離宮恩賜庭園には、水場にひっそりと杜若の花が咲いていました。今日は都会のオアシスより杜若の花をお送りします。

「結火」では毎回、メールマガジンの配信と連動して配信された日の暦のケータイ用待ち受け画面をお送りします。その季節を代表する写真の上に、その日の旧暦での日付(2007年6月19日は、旧暦では5月5日になります)

そして、その日の月齢(2007年6月19日は、月齢4.3)が表されています。

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